疾患
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎は、胃の内容物が食道に逆流し、食道の粘膜が胃酸で傷つく病気です。
放置すると食道癌のリスクが高まるため、早期治療が大切です。
原因
- 食生活の乱れ(脂っこい食事や大量の食事)
- アルコールや喫煙
- 肥満
- ストレス
- 食道下部括約筋の機能低下
- 妊娠
- 高齢による筋力低下
- 胃酸分泌の過剰
など
症状
- 呑酸症状(胃酸が喉まで逆流してくる感じ)
- 胸焼け
- みぞおちの痛み
胃酸が喉まで逆流すると、のどの違和感や喘息のような咳が出ることがあります。
診断
逆流性食道炎が疑われる場合、内視鏡検査で診断を行います。
内視鏡検査は苦しいという印象を持たれている方も多いですが、最近では鼻から挿入する細い内視鏡(経鼻内視鏡)があり、口からの内視鏡に比べて楽に検査を受けることができます。
当院でも希望者には経鼻内視鏡を提供しています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは
胃潰瘍は胃の内壁に発生する潰瘍で、強い胃酸によって胃粘膜が損傷し、深い傷が形成される状態です。
十二指腸潰瘍は、胃酸が十二指腸に進んだ際に粘膜が損傷を受けて形成されます。
どちらも胃酸の影響を受けやすく、粘膜が炎症を起こすことで痛みや出血の症状を引き起こします。
原因
- ピロリ菌の感染
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用
- ストレス
- 喫煙
- 過剰なアルコール摂取
- 遺伝的要因
- 胃酸の過剰分泌
など
症状
みぞおちの痛みが食後に起こる場合は胃潰瘍が疑われ、空腹時や夜中に起こる場合には十二指腸潰瘍が疑われます。
黒いタール便が時々ある場合も、胃潰瘍の重症度が高く、早急な受診が必要です。
また、吐血は重度の貧血や穿孔など危険な状態になる可能性があり、速やかな受診が必要です。
高齢者では、胃潰瘍の出血が心筋梗塞などの引き金になることもあります。
ただし、軽度の胃潰瘍では自覚症状がほとんどないこともあります。
軽い胃の不快感が続く場合には、市販薬で解消できても、一度消化器内科を受診して原因や状態を確認することが重要です。
診断と治療
胃潰瘍の診断は胃カメラ検査で行います。
胃カメラ検査で胃潰瘍と診断された場合、現在出血しているか、これから出血しそうかを確認し、必要に応じて応急処置として止血治療を行います。
胃潰瘍の程度によっては、翌日か翌々日に再度胃カメラ検査で状態を確認することもあります。
胃カメラ検査の際には、必要に応じて胃潰瘍の組織の一部を採取し、ピロリ菌感染の有無やがん細胞がないかどうかを調べます。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシアは、明確な原因が見つからないにもかかわらず、胃もたれや早期膨満感、みぞおちの痛みなどの症状が現れる病気です。
従来は慢性胃炎や神経性胃炎と診断されていましたが、内視鏡検査やエコー検査で異常が見つからないケースがあり、それが機能性ディスペプシアと呼ばれるようになりました。
原因
- 胃の運動障害
- 胃・十二指腸の知覚過敏
- 過度なストレス・トラウマ
- 生活習慣の乱れ
- 胃酸の過剰分泌
など
診断と治療
具体的には、みぞおちの痛み、焼けるような感じ、胃もたれ感、早期満腹感のうち1つ以上の症状が慢性的にあり、胃カメラ検査、ピロリ菌検査、血液検査、エコー検査などで異常が見つからない場合に診断されます。
機能性ディスペプシアの治療では、投薬と生活習慣・食習慣の改善を行います。
アニサキス症
アニサキス症とは
アニサキス症は、生の魚介類や加熱が不十分な魚介類を摂取することで発生する寄生虫感染症です。
アニサキスは約2~3cmの半透明の糸状の寄生虫で、サケ、サバ、サンマ、イカなどの魚介類に多く見られます。
これらの魚介類を人間が摂取すると、アニサキスが胃や腸の粘膜に侵入し、激しい痛みや消化器症状を引き起こします。
アニサキス症の感染経路
アニサキス症は、寄生虫が寄生した魚を生または加熱が不十分な状態で食べることで感染します。
生きたアニサキスが胃の中に入ると、胃壁に食い込んで激しい痛みを引き起こします。
アニサキスは半透明の糸クズのような見た目をしており、肉眼でも発見できますが、魚の身の奥や皮の下に隠れている場合、知らずに食べてしまうことがあります。
診断と治療
アニサキス症が疑われる場合、緊急で胃カメラ検査を行い、胃内にアニサキスがいるかどうかを確認します。
もしアニサキスが発見されたら、その場で取り除く治療を行います。
アニサキスを除去すると、痛みはすぐに和らぎます。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群は、慢性的な腸の不調を引き起こす症状群です。
主に精神的ストレスが引き金となり、便秘や下痢、腹痛などが周期的に現れる特徴があります。
この症状は進行性の疾患ではなく、命に直接的な危険をもたらすわけではありませんが、症状が繰り返し出現することで日常生活に大きな影響を及ぼし、生活の質を著しく低下させることがあります。
原因
はっきりとした原因はわかっていませんが、ストレス、過度な緊張、腸内細菌叢の変化などが関係しているのではないと考えられています。
そのほか、粘膜の炎症、遺伝なども関与しているといわれています。
診断
過敏性腸症候群の症状は、他の消化器疾患でも起こります。
そのため血液検査や大腸カメラ検査、エコー検査などを行い、大腸がんや潰瘍性大腸炎などの可能性を除外する必要があります。
当院では、鎮静剤を使用した“苦しさと痛みに配慮した”大腸カメラ検査を実施しておりますので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。
潰瘍性大腸炎・クローン病
潰瘍性大腸炎・クローン病とは
潰瘍性大腸炎とクローン病は、どちらも難病指定されており、患者数が近年増加傾向にあります。
これらの疾患は共通した症状を引き起こし、症状が現れる活動期と症状がない寛解期を繰り返しますが、異なる病気です。
完治は難しいものの、適切な治療により症状をコントロールし、良好な状態を維持することが可能です。
正確な診断と治療を受けるためには、消化器内科を受診し、鑑別診断を行うことが重要です。
原因
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎の原因は明確ではありませんが、大腸粘膜を白血球が攻撃する自己免疫疾患が関与していると考えられています。
他にも、遺伝的要因、食生活、腸内細菌叢の変化などが関与している可能性があります。
クローン病
クローン病の原因も明確ではありませんが、遺伝的要因や麻疹ウイルスなどの感染、腸管粘膜に異常な反応を引き起こす食事中の成分、腸管の微小血管の血流障害などが関与していると考えられています。
最近の研究では、遺伝的な素因を背景に、食事や腸内細菌叢に対する免疫細胞の過剰反応が発症や増悪に関与しているとされています。
特に先進国で多く見られることから、動物性脂肪やタンパク質の過剰摂取が発症リスクを高めるのではないかとも考えられています。
症状
潰瘍性大腸炎
初期症状として下痢が現れ、次第にお腹がゆるくなることがあります。
進行すると血便や腹痛、便意の頻発などが見られ、さらに発熱、体重減少、貧血などが起こります。
腸以外にも、皮膚や目、関節に合併症を起こすことがあります。
成長期の子どもが発症した場合、栄養の吸収が十分にできず成長障害を引き起こす可能性があり、早期診断と治療が必要です。
クローン病
初期症状として腹部の軽い痛みがあり、下痢や下血、血便が見られます。
腸の炎症で狭窄が起こると便が通過する際に強い痛みを伴うことがあります。
強い下痢が突然起こり、夜間に目覚めることもあります。
発熱、栄養障害による体重減少なども現れます。
胆石や尿路結石、痔などの合併症を起こすこともあり、皮膚や目、関節に合併症が現れることもあります。
診断
症状の内容や発症時期を確認した上で、大腸カメラ検査やレントゲン検査を行います。
大腸カメラ検査では、潰瘍性大腸炎特有のびらんや潰瘍を確認し、組織の採取も行います。
当院では“苦しさと痛みに配慮した” 大腸カメラ検査を実施しておりますので、安心してご相談ください。
大腸がん
大腸がんとは
大腸がんは、大腸の粘膜細胞から発生し、時間が経つにつれて内部から外側に進行し、リンパや血液を介して他の臓器に転移することがあります。
初期症状が少なく、進行すると重篤な症状を引き起こすことがあります。
原因
- 食生活の影響
- 運動不足
- 肥満
- 喫煙
- 遺伝的要素
- 家族歴
など
症状
大腸がんの症状には、便秘や下痢の繰り返し、便の形状の変化、腹部の痛みや膨満感、血便などがあります。
これらの症状は他の消化器疾患と共通しているため、見過ごされがちですが、早期発見が重要です。
診断と治療
大腸がんの診断は主に大腸カメラ検査により行われ、この検査ではポリープの発見や切除が行えます。
便潜血検査も初期スクリーニングとして利用されます。
治療はがんの段階によって異なり、手術、化学療法、放射線療法が含まれます。
胃がん
胃がんとは
胃がんは、胃の内側の粘膜細胞から発生するがんで、時間とともに深い層へと進行し、周囲の組織や他の臓器に拡がることがあります。
この病気は、初期段階ではほとんど症状がなく、進行すると様々な消化器症状を引き起こします。
特に日本では昔から多いがんの一つで、研究と治療法の進歩により、早期発見と治療が可能になっています。
原因
- ピロリ菌の感染
- 喫煙
- 塩分の多い食事
- 過度のアルコール摂取
など
症状
胃がんの初期症状は非常に分かりづらく、食欲不振、胃部不快感、軽い吐き気などがあります。
進行すると、食後の胃の痛み、持続的な嘔吐、体重減少、貧血、黒いタール便などが現れることがあります。
これらの症状は他の消化器疾患と似ているため、診断が遅れがちです。
診断と治療
胃がんの診断は主に胃カメラ検査によって行われます。
この検査により、胃の内部を直接観察し、異常な部位を発見した場合には生検で組織を採取します。
治療方法はがんの進行度により異なり、初期の場合は内視鏡的切除や手術が効果的です。
進行がんでは化学療法、放射線療法、またはこれらの組み合わせが選択されることが多いです。